相続時精算課税制度 | 自分が生きているうちに子供に資産移転をする手段

相続については普通の人も悩みがある

こんにちは。東京都日野市の税理士 坂 有希子です。

先週、市役所の市民税務相談の相談員に従事したのですが、一般の方々が相続についてお悩みなのだと、つくづく感じました。みなさん、ものすごい資産家というわけではないのですよ(たぶん)。でも、コツコツと働き、普通に住宅を持ち、そこそこ貯金をされてきた方でも、平成27年の相続税法の改正(基礎控除の引き下げ)によって、相続税が発生する可能性が出てきたのです。

私の住んでいる日野市は、一応東京都ですが、すごくのんびりとしたところです。いままでは住宅を持っていて、ちょっとした金融資産を持っているくらいだと、相続税が発生するようなことは、あまりなかったかもしれません。ですが、このエリアについても、相続税法の改正で、ちょっと状況が変わってきています。

国の法律で決まっていることなので、相続税を支払うことは致し方ないのですが、少しでも多くの財産を、残された家族に渡したいと思うのは当然です。

そこで考えるのは、生前贈与です。

贈与についても、贈与税というものがかかります。一般的に贈与税の税率は相続税よりも高く設定されており、下手に贈与するならば、相続のときまで待って、相続税を支払ったほうがいいという場合もあります。

それでも早めに贈与をして、財産を有効に使いたいと思われる方が本当に多くいらっしゃるのです。

一般の方が使いやすい贈与の方法としては、以下のようなものがあります。

  • 暦年贈与(年間で110万円未満の贈与については贈与税がかからない)
  • 直系尊属からの住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置
  • 贈与税の配偶者控除
  • 相続時精算課税制度

今日は、相続時精算課税制度についてお話したいと思います。

相続時精算課税の概要

どんな制度か

相続時精算課税とは、簡単にうと、親(または祖父母)から子(または孫)へ行う生前贈与は、通常の贈与に比べて贈与時の税負担を軽くする、その代わり相続時に贈与財産も含めて相続税を計算し、払った贈与税は相続税から差し引いて精算するという制度のことです。

もう少し細かく見ると、

①60歳以上の親(または祖父母)から20歳以上の子供(または孫)への贈与について
②贈与金額2,500万円(単年度でも複数年の累計でも)までは贈与税はゼロ
③2,500万円を上回る贈与について、贈与税は一律20%
④親(または祖父母)がなくなったときには、贈与された財産を相続財産に加えて相続税額を計算し
⑤その際、すでに支払った贈与税があれば、相続税額から差し引く
⑥相続税額より支払った贈与税額が多ければ還付が受けられる。

という制度です。

例で考えてみましょう

1億円の財産を保有しているお父さんが、そのうちの4,000万円を子供に贈与しました。
そして贈与時に相続時精算課税を選択しました(これ以後、子供は暦年贈与は受けられません)。
財産をもらった子供は、2,500万円までは贈与税がゼロ、それを超える部分の1,500万円については一律20%の贈与税がかかります。

1,500万円×20%=300万円なので、
支払う贈与税額は300万円となります。

もし、相続時精算課税を受けずに暦年贈与で4,000万円贈与したとすると、

(4,000万円-110万円)×45%-265万円=14,855万円

の贈与税がかかることになりますので、その差は歴然としています。

相続時はどうなる?

もし上記の例で、お父さんが亡くなったとします。
その場合は、贈与された4,000万円を相続財産に加えて相続税を計算しますので、相続財産は(もしほかに散逸していないとすると)、当初の1億円となります(お父さんの手元に残っている6,000万円と相続時精算課税制度を利用して贈与された4,000万円の合計)。

相続人がこの子供一人だけだとすると、相続税額は

(1億円-基礎控除3,600万円)×30%-700万円=1,220万円

とういうことになりますが、実際に納付する金額は、生前の贈与時に支払った贈与税の金額300万円を差し引いた920万円ということになります(相続税額1,220万円-贈与税額300万円=920万円)。

相続税を安くする制度ではない

気が付いた方もいるかもしれませんが、相続時精算課税制度を利用したからといって、相続税の金額は安くなっていません。贈与をしてもしなくても、トータルで支払う税金は1,220万円なのです。
ただ、相続まで待たずに子供に早めの資産移転をすることができるという制度なのです。

それで意味があるのかないのかというのは個人の考え方や生き方に拠ってくるのでしょう。

たとえば、子供が事業を始めるとか、家を建てたいとかというライフイベントがあったとします。
その場合には、親としては資金を援助してあげたい。自分が死んでしまってからだと、遅いのだと考えることもありますよね。
親心ですね。
そういうときには、相続時精算課税制度というのは非常に有効な手段なのだろうと思います。

相続時精算課税については、まだまだ書き足りないことがいっぱいあるような気がしますが、今日はこのへんで。

ではまた。

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